幼馴染の裕子には、秘密がある。それは彼女がテレパスだってこと。
 人の心が読めるっていうのは便利なようで、実はあんまり良くないみたい。本音がわかっちゃうっていうのは結構大変で、時には辛かったりもするらしい。
 だから裕子は、思ったことがすぐ口に出るタイプなあたし以外の人とは、これまであんまり深く関わろうとしなかった。あたしはそれがちょっと心配だったから、大学に入って好きな人が出来て、付き合うことになったって聞いてすごく嬉しかった――その相手が誰かを聞くまでは。
「野田? 野田ってあの、野田直樹?」
「うん、そう」
「何でよ、あんな何も考えてなさそうな奴――」
 文句を言うあたしに、親友はにっこり笑って答えた。
「だからよ。彼、何も考えてないから。そこがいいの」



呟きからサルベージ。(328字)




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