或る闘い(ぱーと2) 一月が行って二月が逃げて三月が去ると、春がやってくる。 春とゆーのは、大体においてイイ季節だと思う。花粉症の人間には辛いだろうけど、この暑過ぎも寒過ぎもしない穏やかな季節を「嫌いだ」という人間はあまりいない気がする。 かくいう俺も、幸い花粉症じゃないし、春とゆーのは結構好きなのだ。 だが、やっぱしどんな奴にも欠点があるように、この季節にも欠点はある。 春、それは奴との闘いが最も白熱する季節なのだ。 今、俺は講義の真っ最中。窓際の席からは丁度桜の木が見え、穏やかな日差しを受けながらはらはらと花びらが舞い落ちている。 だが、俺はこういう時がやばいのだと経験的に知っている。 奴はするりと忍び寄ってきて、気付いた時には時既に遅く、奴の手の中。 わかってはいても、奴の甘い誘惑に勝てる人間が一体どれだけいるだろう。少なくとも俺はかなりの確率で負けっぱなしだ。到底抗えない。 (う・・・) 俺は小さく心中で呻いた。奴が俺に手招きをしているのがわかる。 (・・・ダメだ、今日こそは・・・) 無理に奴を追い払おうとするとくらくらした。咄嗟に机についた片手で頭を支える。 (・・・・・・す・・・すこしくらい・・・) 俺はとうとう奴に身を委ねた――その瞬間。 「!」 肘が滑って、支えを失った俺はしたたかに額をぶつけた。周囲からくすくす笑いが漏れ、教壇の上から教授がじろりと俺を睨み付ける。 俺は顔を赤くして俯いた。でも、この陽気の午後の講義なんて、子守歌以外の何物でもないよなあ・・・ ――こうして俺は目下のところ、睡魔との闘いの連敗記録を更新中である。 春眠暁を覚えずってね。(700字) →戻る |
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