話にならない話


「よう」
「何だお前か。久しぶりだなあ。今日はどうしたんだよ?」
「どうしたじゃないよ。ちっとも会わないから、心配して来てみたんじゃないか。この時間帯なら、確実にいるだろ」
「そうか。悪かったなぁ」
「具合でも悪いのか?」
「いや。まあ、元気といえば全く元気だけど」
「じゃあ一体どうしたってんだよ。お前、全っ然出て来ないじゃないか」
「その・・・それにはちょっと、理由があってな・・・」
「理由、ねぇ・・・ひょっとしてお前、まだ駄目なのか?」
「うん。恥ずかしながら、そうなんだ」
「お前、昔っからだよな。でも、いつまでもそうやって引っ込んでるわけにもいかないだろ」
「わかってるよ。それでも、駄目なものは駄目なんだ、仕方ないだろ」
「情けない奴だな。てか、変だぞお前」
「そうか?」
「昔は情けないだけだったけど、今は立場が微妙に違うしな。変だって。暗所恐怖症で夜出られない幽霊なんて、そういるもんじゃないだろ」
「ううむ、反論の余地がない」
「もうお前、さっさと成仏した方がいいんじゃないか?」
「それが出来れば苦労しないって。俺、昼なら出ても大丈夫なんだけどさ」
「昼の幽霊とか、様にならないぞ」
「それ以前に昼だと俺らは見えないじゃないかとか、突っ込む点があるだろうが。・・・まぁとにかく、だから誰も俺に気づかないし、そしたらもちろん供養だってしてもらえないからさ・・・したくとも成仏できないんだな、これが」
「それは・・・困ったな」
「ああ、困ってるんだよ・・・」



ヨコジュンにも同題の短編があります。
あれも会話文のみ、というただそれだけで題を拝借させていただきました。
つーかヨコジュンといって一体どれだけの人がわかるのやら。(648字)




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