Ghost House


 町外れに、幽霊屋敷ゴーストハウス があるという。
 面白そうだし最近暑くなってきたし、って事で俺は面倒だと渋る友人を連れてそこへ行ってみることにした。

「お、ここだな」
 そこは古い洋館で、いかにも怪談に相応しい雰囲気だった。
「すげーとこだな。ほんとに行くのかよ」
「ここまで来といて何言ってんだ。行くぞ!」
「ここ誰もいねーの? 怒られるだけならいいけどさ、不法侵入とかってめんどい事になんのやだぞ、俺」
「こんなボロいとこに住む奴いるかよ。だいじょーぶだって。俺を信じろ!」
 ぼろぼろに錆び付いた門は、ちょっと蹴ると簡単に倒れた。
 踏み越えて荒れた庭に踏み込むのに、背中から溜息が聞こえた。
「その根拠のない自信は一体どこから来るんだよ・・・」
 ぶつぶつ言いながらも、一応付いてくるらしい。

 傾いたドアから入って、持参した懐中電灯で照らしながら、館の中を探索する。
 雰囲気こそばっちりだったが、一通り歩き回っても、幽霊は一人も姿を現さなかった。
 いい加減ホコリと蜘蛛の巣まみれになったところで、不機嫌な声。
「――何もいないぞ」
「そんなことない。ネズミと蜘蛛がいたろ」
「何しに来たんだお前。幽霊見に来たんだろユーレイ。ったく、これならフツーにお化け屋敷でも行ったが良かったぜ」
 コイツもしかして、渋ってた割に結構楽しみにしてたんじゃないのか?
 とりあえず、コイツはいったん不機嫌になると引き摺るからな。
「悪かったって。帰りジュース奢るからさ。な?」
 まだぶつくさ言う奴を宥めて、俺たちは収穫ナシで館を後にしたのだった。

 翌日。俺らは情報提供者に文句を言った。
「おい、昨日言ってた幽霊屋敷だけど、幽霊なんて出なかったぞ。ボロい洋館で雰囲気はあったけどさ」
「・・・ちょっとお前ら、これからもっぺんそこ行ってみな。俺が言った意味わかるから」

 もう一度、今度は昼間に行ってみたそこは、館など影も形もない空き地だった。

 なるほど、確かに件の館は『幽霊屋敷』であったらしい。



怪談を書こう、ということで書き始めたはずの話。(871字)




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