空がだんだんと、赤く染まっていく。
 それをぼんやりと見ながら、私は深い溜息を吐きそうになるのを堪えていた。
 また一日が終わろうとしている。
 それは同時に、私の命が刻一刻と短くなっていることを告げていた。

 私はもうすぐ殺されるのだ。恐ろしい『奴』の手によって。
 大勢いた仲間達は、既にその大半が『奴』に連れ去られてしまった。『奴』によって無残な最期を遂げたことは疑いようもない。  昨日はとうとう、私の隣にいた者がやられた。
 彼は必死に抵抗したが、非力な私たちがいくら抗おうとも『奴』には通用しない。そうして『奴』は半ばせせら笑いさえ浮かべ、彼を強引に連れて行ったのだ。

 ――きっと、今度こそ私の番だ。

 どうにかして、ここから逃げ出す術がないだろうかと思う。
 だがここは私たちのために誂えられた牢獄なのだ。元より私たちに逃げ出す手段などありはしない。
 何故こんな目に、と嘆いたところでどうにもならず、これが運命なのだと諦めるしかなかった。
 唯一出来るのは、こうして静かに“死”を待つのみ。

 近づいてくる足音。

 『奴』に違いなかった。
 覚悟はしていたつもりだが、矢張りいざとなると恐ろしい。

 頼むから、来ないでくれ・・・――

 祈りも空しく、『奴』は私の前で足を止めた。
 その口元に獰猛な笑みを浮かべ、私に手を伸ばす。
 ――やめろ! 助けてくれ!
 昨日の彼と同じように、無駄だとわけっていて必死で足掻いた。が、『奴』が少し力を入れただけで、私は呆気なく引きずり出された。

 ――全ての望みは断たれた。否、そんなもの最初からなかったか。
 私にはもう、項垂れて大人しく『奴』に従うことしか残されていなかった。

 最後に身体を清められ、冷たい板の上に寝かされた。
 『奴』がぎらりと光る刃を振り上げるのを見ながら、私は思った。
 ――もし生まれ変わる時は、せめて野菜でなく温室の花にでも生まれたいものだ、と。



飽食の現代に宛てたメッセージ、として作ったとゆーワケじゃありません。(831字)




  →戻る
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送